宝塚市長選挙に際して、市議会議員として感じること

 私は2年前の4月に、宝塚市議会議員になりました。その時以来、私は自分なりに「少子高齢化が進むこの時代において、宝塚市はどのようにすれば、選んでもらえる市であり続けることができるのか」について考え続けてきました。
 私は長年、学習塾の経営者をしてきたため、市の未来を考える場面においても、どうしてもマーケティング的な観点から見つめることになります。例えば、ある商品を売って、大人気商品にしていきたいとしましょう。そこで一番大切なことは「商品の良さ」ですが、それとほぼ同じくらい重要なのが「PR力(良さをどうやって伝えるか)」です。この部分が足りないせいで、質が優れているのに全く売れないまま埋もれてしまった商品を、私は世の中で沢山見てきました。情報が世の中に溢れている現代においては、「商品さえ優れていれば、いつかその良さは世間に伝わる」という考え方は、もはや通用しません。優れた商品には、それを広く知ってもらうための「PR」が必要不可欠なのです。
 私は、今の宝塚市に不足しているのは、ここの部分(PR力・マーケティング戦略)だと考えてきました。すなわち宝塚市には「魅力がない」のではなく「魅力を上手く伝えきれていない」ということです。
 こうした視点を持っていたことから、私は2024年6月の定例会において「本市の広報戦略について」という一般質問を行いました。そこで「西宮市のキャッチフレーズ『文教住宅都市』が、市の魅力を一言で表した非常に優れたものであること」「宝塚市のキャッチフレーズは複数存在している上に非常に抽象的であって、市の魅力を分かりやすく伝えるものになっていないこと」を指摘し、その上で「市長が一番伝えたいと考えている宝塚市の魅力は何か?」と尋ねました。しかし、その際に返ってきた答えは「宝塚市の一番の魅力は『市民』です」という無責任なものでした。

 なぜこの回答が無責任なのか、少し分かりづらいと思いますので説明します。まず、西宮市の「文教住宅都市」というメッセージは、地方自治体が住民(あるいは住民になろうと検討してくれている人たち)に向けて発するメッセージとして正しいものです。なぜなら、「文教」の意味するところである学校教育は、市町村(や都道府県)が住民のために作り上げていくサービスに他なりませんし、「住宅」の部分についても、直接土地や家を売るのは自治体の仕事ではないにしても、公園や道路などの住環境を整えるのは市町村(や都道府県)の仕事だからです。すなわち、このメッセージは、売り手が買い手に対して「自社の商品(サービス)のアピールポイント」を説明しPRするものとして適切だといえます。
 ここまで話せば、「市民」という言葉が、地方自治体が自らの魅力を語る言葉としてふさわしくないものであることはもう分かっていただけますよね。そう、「市民」は「文教」や「住宅」とは違い、市が住民に対して提供していくサービスを説明する言葉ではありません(というより、受益者である住民そのものを指す言葉になっている)。これは、飲食店が自店の魅力を聞かれて「雰囲気」や「料理」といった自店のコンテンツを挙げずに「お客様です」と言っていることに他なりません。もちろん、お客どうしの交流や客層の良さが結果としてコンテンツになっているお店もあることにはありますが、それはまずお店の魅力があるからこそ成立する話であって(お店に優れたコンテンツやコンセプトがあるからこそ、そこに共感したお客さん達が集まってきて、お客さんも含めて全体の雰囲気が確立する)、お店側が初めから、集まるお客さんの層に期待しているようでは話になりません。私はこの回答を受けた時、はっきりと感じました。「これは、だめだ。このままではいけない」と。

 宝塚市には魅力が数多くあります。ただ、それを伝えるのが市として上手ではないため、これから住むまちを選ぶ人が「何を良しとして」宝塚市を選べば良いのかが、今一つ見えてきていないと思います。だからこそ、私は市長に問うたわけです。「市長が一番伝えたいと考えている、宝塚市の魅力は何ですか?」と。

 私は、宝塚市の市長になる人には、この問いに対する答えを明確に持っていて欲しいと考えています。そしてその人が市長になったあかつきには、その魅力を、4年間かけて徹底的に磨き上げ、また一貫したPRを続けていってほしいと思っています。それこそが「宝塚市はどのようにすれば、選んでもらえる市であり続けることができるのか」という問いに対する、私自身の今現在の答えです。

 市外の友人もこの記事を読んでくださっていると思いますので、お尋ねしてみたいと思います。「あなたのまちのリーダーは、まちの強み(アピールポイント)を正確に理解していますか?」「まちのグランドデザインを持っていますか?」「そしてそれを、力強いメッセージをもって発信し続けることができていますか?」

 その答えがイエスなら、きっとあなたのまちには未来があります。もしその答えがノーなら、ぜひ、次の市(町村)長選挙に関心をもってみてほしいと感じました。

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